第55回クラシカルコンクール本選の感想

来年(2025年)の第56回クラシカルコンクールは、5月4日(日)に三鷹市芸術文化センター星のホールで行われることがつい先日決まりました。

それを機に、今年のコンクールの感想をまだ記載していないことに今更ながら気がつき、今回アップすることにしました。

以下、その感想文です。

今年のクラシカルコンクールは、まさに『審査員泣かせのコンクール』だったと思う。演奏レベルの高さはいつものことながら、予選敗退と本選出場を分けたのが、わずか0.1点差と言う採点結果からも、いつも以上に接戦だったことはお分かりいただけるだろう。

 特に本選では、出場した6名のうち、演奏曲を途中で失念してしまった1名を除く5名全員が1位票を獲得し、誰が1位になっても不思議ではない内容となった。

そんな接戦を制し第1位となったのは、二上育矢さん。昨年3位入賞の実力者。前回は音や主張にやや物足りなさが感じられたが、一年でしっかり骨太に成長していて、その演奏は真摯で力強く、心にドスンと深く届くものがあり感動した。

そして、第2位になったのは、福山日陽さん。予選1位通過。いつものびのびと楽しそうに演奏するので、こちらまで楽しくなってしまう。指もよく動き、難しいパッセージも自由自在に弾いてしまうテクニックは羨ましい限りだ。だが、もしかするとそれが落とし穴なのかもしれない。感覚でサラッと弾けてしまうせいか、拍が流れて指揮が取りにくい。曲による時代感ももっと表現して欲しいと思うのは、欲張りすぎだろうか。今後ますます期待したい才能豊かな若きギタリストであることには微塵の疑問もない。

さて、次の第3位は、赤井香琳さん。P,PPの繊細な表現が抜群に美しい。独自の感性で個性的な演奏をする。しかし、それが行き過ぎてしまうと、楽曲そのものの良さが個性によって消されてしまう危険がある。以前の演奏スタイルのままなら、音楽理論を勉強したらこんな解釈にはならないのに…と思っただろう。今でもその尺度を持ち続けている自負はある。ところが、今回の演奏は、個性と楽曲が相俟って素晴らしく素直に楽しめた。誤解を恐れずに言うならば「ちょっとヘンなのに、なんかイイ」のだ。まるでシャガールの絵画のように、個性が芸術に昇華したようにさえ感じられた。

以上、上位3名の感想を拙い文章で書いてみたが、このコンクールではいつも素晴らしい演奏に出会え、感謝の気持ちでいっぱいになる。今からもう来年が待ち遠しい。

以上。